自家歯牙移植
Tooth transplant
自家歯牙移植と
インプラントの違い
インプラントは人工の歯根をあごの骨に埋めこむ治療です。埋め込む点は自家歯牙移植と似ていますが、素材がまったく異なります。どちらの治療が適しているかは歯科医師の判断と患者様のご希望によって変わります。
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自家歯牙移植 | インプラント | |
---|---|---|
ドナーと なる歯 |
必要 | 不要 |
外科処置の 箇所 |
1~複数個所 | 2か所 |
骨への 影響 |
影響が多い | 影響は少ない |
治療後の 矯正治療 |
可能 | 不可 |
治療期間 | 半年~1年程度 | 3~4ヵ月程度 |
自家歯牙移植の仕組み
自家歯牙移植の一番のポイントは、歯の周囲に存在する「歯根膜」です。
歯は骨の中に埋まっています。その骨と歯をつなぐ組織が歯根膜です。この歯根膜は、歯の根の全体を覆うように存在していて、その中には再生能力の高い細胞がたくさん含まれています。ただ、再生する必要がない状況では、この細胞は眠っているのが普通です。そこに「歯の移植」という刺激を与えることで、再生能力を持つ細胞を活性化させるのです。その効果をねらい、歯を移植する際にはその周囲に存在する歯根膜も一緒に移植します。
活性化した細胞では、骨をつくる細胞や歯茎と骨が結合するのに必要な細胞が増殖し、その結果、歯を支える組織(歯周組織)も再生し、移植した歯と周囲の骨をつなげられるというメカニズムが働きます。
歯根膜の中の再生能力の高い細胞の存在によって、歯の移植が実現するのです。
自家歯牙移植成功の
ポイント
抜歯の際に歯根膜をできるだけ傷つけないようにすることが大切です。もし歯根膜がはがれてしまうと、骨と歯がうまく適応せず、将来的に歯根が溶けるリスクが高まります。実際に移植してすぐに成功が決まるわけではなく、その後の経過観察とケアが重要です。
移植「成功」を判断する基準
-
Point.01
歯と一緒に移植した歯根膜が再生力を発揮し、骨と結合すること
-
Point.02
ドナー歯と移植する場所の歯茎を合わせて、なるべく動かないように固定すること
自家歯牙移植が
適応できる症例
自家歯牙移植は、さまざまなメリットがあります。ただし実際に治療可能かどうかは、さまざまな条件に左右されます。代表的なのは以下の4つです。
-
01
ドナーとなる歯がある
移植するためには、健康なドナー歯が必要です。なかでも親知らずは噛み合わせへの貢献度が低いため、ドナーになりやすいといわれています。ただし、誰にでも適応可能ではありません。親知らずが埋まっていて形が複雑な場合は、慎重な判断が求められます。
-
02
移植するのに
十分な歯根膜がある歯根膜の状態は移植成功に深く関わります。歯根膜がきちんと残っていると、移植先の骨と歯が良好に結合しやすい傾向があります。一方で歯周病などによって歯根膜が損傷していると、長く機能しにくいため注意が必要です。
-
03
移植先の歯や歯根の
大きさと適している移植先とドナー歯のサイズや形が合わないと、無理に埋め込んでも噛み合わせが安定しづらいです。そのため、このようなケースでは自家歯牙移植をご提案しにくくなります。
-
04
歯根の形が複雑でない
歯根が複雑な形をしていると自家歯牙移植は難しくなります。
歯根が1本で単純な形をしているほうが、抜歯や移植時に歯根膜を傷めにくいメリットがあるのです。そのためレントゲンやCTなどで事前にチェックし、歯根の状態を正確に見極めます。
治療が保険適用となる
場合もあります
自家歯牙移植は条件を満たせば保険で扱える場合があります。すべての方に適用されるわけではありませんが、「治療費が高額になるから……」とあきらめていた方も、ぜひ一度ご相談ください。
保険適用の条件
- 提供歯(ドナー歯)が親知らずであること
- 移植をする治療を開始した段階で、提供歯(ドナー歯)、受給歯(レシピエント歯)がどちらも存在してサイズが合っていること
自家歯牙移植の
メリット・デメリット
Merit メリット
- 噛んだ感覚が自然に近い
- 歯根膜があるため周囲の骨への負担が少なめ
- 隣の歯を大きく削る必要がなく、他の歯の寿命を延ばしやすい
- インプラントより柔軟に矯正治療を組み合わせやすい
Demerit デメリット
- インプラント以上に外科的技術が求められ、術者の経験が問われる
- ドナーとなる健康な親知らずなどが不可欠
- 骨や歯の大きさが適合している必要がある
- 抜歯と移植の両方で手術が必要となり、身体的負担が増す
- 条件を満たさない場合は保険適用外で、費用負担がかさむ可能性がある
自費診療となる場合の
詳細
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費用 | 治療期間 | 治療回数 |
---|---|---|
¥55,000~110,000(税込み) | 3~4ヵ月 | 2~4回 |

移植後も天然歯で
過ごしていくために
移植して終わりではなく、
継続的なメインテナンスが
歯を守ります
治療後も定期的にご来院いただき、移植した歯が定着しているかを確認します。
また、治療が完了し歯が安定した後でも、虫歯や歯周病などのお口の病気リスクを下げるため、継続的・定期的なメインテナンスは必要不可欠です。
皆さまが長く健康な歯で過ごしていけるよう、全力でサポートさせていただきます。